■三二式特型「閃雷」機体解説 最初期に配備され改良を重ねて戦線を支えていた三二式系列機であったが、 次々と投入される月面プラント側新型機の前に性能不足は明らかであった。 特にNSG-X1「フレズヴェルク」に対しては機動性やその火力に対する防御力が決定的に不足し、 甚大な損害を被っていた。 地球防衛機構側もNSG-X1に対抗し得る新型機を開発中であったがその完成にはなお時間を要し、 前線への対抗機配備は急務であった。。 この状況を受け、地球防衛機構は三二式の戦力強化案を各方面に打診した。 要求概要は  ・三二式にNSG-X1と対抗しうる性能を付与すること  ・既存の三二式との互換性を考慮すること  ・極力短時間・低コストで戦力化が可能であること の三点とされ、有力案については試作機が数機作られた。 だが、戦況の逼迫から試作機の評価試験が実戦という状況も日常茶飯事であり、 この三二式特型「閃雷」もそんな経緯で実戦投入された機体の一つである。 NSG-X1の光学兵装に対しては、機体を小型化することで被弾面積を極限し、 装輪走行による高速機動で敵機の照準を困難にすることを企図している。 機体サイズは三二式の60%程度に抑えつつも、本体部品の互換性も確保。 装甲は三二式一型「轟雷」と同程度だが、上空よりの攻撃に抗するため上半身に集中装備している。 攻撃面では飛行するNSG-X1に対して有効な攻撃を行なうために、 右腕部に高初速で連射性能に優れる60mmガトリング砲が固定装備されている。 FAが装備する火砲としては低威力であるが装甲の薄いNSG-X1には有効と考えられ、 SA-16「スティレット」の10倍近い弾数を以って常に弾幕を張ることで NSG-X1にTCSを展開させ続けエネルギーの消耗を狙う。 また、接近戦が可能な距離にまで接近できた場合、 背部に装備した使い捨ての背部ロケットブースターを点火して一気に接敵、 左腕部に装備したパイルバンカーによる直接打撃を試みる。 この距離でも60mmガトリング砲は有効で、もしパイルバンカーがTCSによって防がれたとしても 至近から多数の砲弾を叩きこむことで更なるエネルギーの消耗を強いることができる。 以上のように本機はNSG-X1の撃破ではなく撃退を狙う機体と言える。 実戦投入された本機は想定通りの性能を発揮し一定の効果を挙げたが、 三二式系列のパイロットが機種転換するには本機の操縦特性は特殊すぎたため 小数量産はされたものの三二式系列を代替するには至らなかった。 本機は三二式系列で編成された部隊に配備され、空からの攻撃から部隊を守る傘として使用された。 だが、月面プラント側が近接戦闘力を強化したNSG-X2「フレズヴェルグ・アーテル」を実戦投入したことで 本機が戦果を挙げることは難しくなった上に、 新型のTCSオシレーターを装備して物理的な防御力と稼働時間が飛躍的に増大した新型機が出現するに至って、 基礎火力の貧弱な本機が活躍する余地は完全に無くなり、第一線から退くことになった。 月面基地攻略作戦が開始された現在も残存する本機は地球に留められ、残敵の掃討任務に充てられている。